Thursday, May 12, 2011

(9) 4月10日 再び、世界中のみなさんへ

[ 地震から今日で2か月経ちました。
ご心配いただいて本当にありがとうございます。
この文章はちょうど1か月に書いたものです。]

あれから1か月経ちました。今日、3月12日の新聞を読みなおしました。
1ヶ月間、元の生活に戻ろう、と必死だった私ですが、3月11日の大地震を報じた新聞を読み、私たちの国に起きた災害がどれほど大きな規模だったかがもう一度胸に迫ってきました。

日本は地震が多い国です。幼稚園や小学校の頃から、地震が起きた時のために避難訓練をします。
ですが実際に大きな地震にあうことは滅多にありません。私たちは地震に慣れているわけではないのです。

私は地震が起きたとき、学校の4階で学生と一緒でした。私自身、こんな大きな地震は初めてでした。
学校は9月に新しい校舎になったばかりでした。避難路は確認していましたが、数教室に散らばっている学生を集めなくてはなりませんでした。

私たちが避難訓練で真っ先に言われるのは地震が起きたら冷静に対処すること、慌てないこと、です。
4階にいる大人は私一人でした。怖がって慌てている学生たちを1か所に集めようと呼びかけると、まだ揺れているのに、避難路を確保するために私が開けたドアから次々に非常階段を下りてしまいました。
けが人は出ませんでしたが、本当はこれはとても危ないことです。
揺れがおさまるのを待ってから、外に出なくてはいけないのです。

私は冷静でいなくてはいけない、怖がっている様子を学生に見せてはいけない、と必死で、そこまで考えが及びませんでした。

地震の翌日、家に帰った時には本当に安心したつもりでした。

親戚の無事も確認でき、海外の友人からも励まされ、日本は大丈夫だと思っていました。

電車がいつ来るかどうか、とか、計画停電なんて大したことはないと思っていました。

被災地では、辛い思いをしている人が、たくさんいる、私はご飯も食べられるし、自分の家の布団で眠れる、髪の毛も洗えるし、お風呂にも入れる、私が不安がったり、不満を言ってはいけない、とずっと思っていました。

そのうちに原子力発電所の事故のニュースを聞くのも嫌になりました。
避難所の様子を見ると知らないうちに涙が出てきます。
でも辛いとか可哀そうとか、といった感情はブロックされたように湧いてこないのです。

海外の友人がどんなに励ましてくれても、ここにいない人に分からない、と思っている自分がいました。

私には、思いきり甘えることができる人がいます。
彼の前では思いきり泣くことができます。でも彼は遠くにいます。
私が感じる状況を一生懸命理解しようとしてくれますが、ここで一緒に経験しているわけではない、という思いが強くありました。

同じように、実際に我が家を、ご家族を、自分のいた大地を目の前でなくした方がいるのにその人たちのことを考えられない自分がいることに気づき、こんなひどい人間がいていいのかと思い始めました。
阪神大震災の時には現地に今すぐに飛んで行って何かさせてもらいたい、と思ったのに、そんな気持ちすら湧いてきません。

そんなとき、彼の友人がメッセージをくれました。彼は「そのまま伝える」と言って彼にあてたメッセージをそのまま私に教えてくれました。
もし、君が伝えた方が良いと思ったら、彼女にこう伝えて欲しい。
一刻も早い復興を祈っていると。あなたにもご家族にも、ご親戚にも。
こうした祈りの言葉や僕達の想いが実際には何の助けにもならないと分かっている。
でも君がそうした方が良いと思ったら、どうか伝えてくれ。

どこかで私たちのことを考えてくれる人がいる、そのことが本当に何の助けにもならないのだろうか。
人の言葉には何の力もないのだろうか。だとしたら人の祈りや想いは何のためにあるのだろうか。
このメッセージをもらって、私は拙いけど私の経験を書こうと思いました。被災地の悲惨な状況を伝えることは出来ないけど、今、ここ、の日本を私を伝えようと思いました。

そうです、私は怖かったんです。あの時、地震の時、本当に怖かった。この子たちを守らなくては、という責任に押しつぶされそうだった。なのにすぐに平常業務に戻らなくてはいけなかった。
そのあとも揺れるたびに日本が足元から崩れていくような気持ちになったんです。
電車がいつものように動かなくて、このままずっと毎朝5時に起きなくちゃいけないんじゃないか、スーパーに行っても欲しいものが買えないんじゃないか、と不安だったんです。
ですが、被災地の人のことを考えたら、大した被害のなかった私はそんな恐怖や不安を感じてはいけないと、気持ちを抑えていたんです。

避難所の人たちからメッセージを、というテレビ番組を見ました。
「迷惑かけてごめんなさい、でも大丈夫だからって伝えてください」
「頑張るから、頑張るしかないから、頑張って」
「私たちがここにいることを忘れないで」

これほど大きな被害にあったのに「迷惑かけてごめんなさい」と言う、これが東北の人々の、日本人の国民性です。
どうぞ、ごめんなさいなんて言わないでください。みんな、あなたが頑張っていることを信じています。そして覚えています。この事実を、あなたを、私は忘れないで、生きていこうと思います。

とおやまあつこ

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